
探偵と言えば「尾行」ということで、真っ先に思い浮かぶ方も多いかと思います。
探偵の調査では車やバイクでの尾行や徒歩での尾行、自転車での尾行もあります。
でも、そもそも「尾行」とはいったいどのような定義なのでしょうか。
今回は「尾行」について掘り下げ、調査露見トラブルや行政処分について等の注意事項についてもをまとめてみました。
尾行とは
尾行とは、相手の行動を探ったり監視したりするために、気づかれないようにあとをつけて行くこと。
尾行の用法
「尾行をまく」「容疑者を尾行する」
尾行の類義語
・「追尾」は、ぴったりと後ろについて、どこまでも追っていくこと。
・「追跡」は相手が見えない場合もあるが、追い方は鋭く容赦ない。跡をたどってたどり着こうとすること。また、「追跡調査」のように、物事があったあとの経過、筋道をたどることにもいう。
以下より一部抜粋
https://dictionary.goo.ne.jp/thsrs/1582/meaning/m0u/
実際は、探偵事務所の調査報告書における文面では、「尾行」という文言はあまり使われず、
「追尾」、「追跡」が好まれます。

尾行で重要なこと
さて、尾行をするうえで探偵として最も重要なことは、

という部分になります。
それはなぜか。
調査が気づかれるということは、依頼者にとっては大きなダメージとなります。
夫婦不和や相互不信、ターゲットからの暴力・暴言、家庭崩壊や離婚の原因となり得るからです。
実際、夫に対しての浮気調査が発覚したことにより妻が夫に暴力を振るわれてしまい、病院に入院するほどの傷害事件となったケースもありますし、
もっとひどいケースでは夫による殺人事件にまで発展してしまったケースもあります。
また、その他にも弊害はあります。
探偵の調査の露見により、探偵業者に対する公安委員会からの処罰(行政処分)が下されることもあるのです。
これは、実は探偵業法上の処分でした。
探偵の尾行調査はストーカーではない。でも処罰を受けることも
探偵の尾行調査は、人を追いかけてついて回ることから、ひょっとすると「ストーカー」かと思われる方もいるかもしれませんが、それは明確に違います。
ストーカーとは違い、

ただし、調査ターゲットが尾行に気づいているのにもかかわらず、探偵が尾行を継続するような特殊な事態があった場合、ストーカー(つきまとい)とみなされ、ストーカー規制法が適用される可能性があります。
ストーカー規制法とは
ストーカー規制の目的(法第1条)
ストーカー行為を処罰するなどストーカー行為について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置等を定めることにより、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資することを目的としています。ストーカー規制法とは
以下に示す「つきまとい等」を繰り返すストーカー行為者に警告を与えたり、悪質な場合は逮捕することで被害を受けている方を守る法律です。
この法律による規制の対象となるのは、「つきまとい等」「ストーカー行為」の二つです。1.「つきまとい等」とは
この法律では、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、その特定の者又はその家族等に対して行う以下のアからクを「つきまとい等」と規定し、規制しています。ア つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等
例えば、あなたを尾行し、つきまとう。
あなたの行動先(通勤途中、外出先等)で待ち伏せする。
あなたの進路に立ちふさがる。
あなたの自宅や職場、学校等の付近で見張りをする。
あなたの自宅や職場、学校等に押し掛ける。
あなたの自宅や職場、学校等の付近をみだりにうろつく。
探偵としては、上の黄色くマーキングした点に気をつけなければなりません。
そう、「つきまとい等」の部分です。
探偵事務所は「つきまとい等」を理由に処分される場合がある
ですから先述のように、
「調査ターゲットが尾行に気づいているのにもかかわらず、探偵が尾行を継続するような特殊な事態があった場合」、
それは「つきまとい等」ということで認定される可能性があり、
ストーカー規制法が直接的に適用される可能性があります。
なお、探偵業者に対する過去の行政処分の事例を見る限り、
ストーカー規制法が直接的に適用されたわけではなく、これに違反することを理由に
探偵業法という法律で行政処分(指示処分や業務停止)を受けた例があります。
非常にややこしいのですが、かみ砕いて説明すると、

探偵会社としても怖いですね。
探偵業法違反として都道府県公安委員会から指示処分を受けたり、業務停止を受けたりし、それを一般に公表されてしまえば探偵業者にとっては大ダメージとなります。
だってかなりのイメージダウンですよね。依頼人からすると、行政処分を受けるような探偵社に率先して頼みたいとは思わないでしょうから。。。
そのようなことにならないように、探偵は調査ターゲットが警戒している状況であれば、気づかれる前に調査を中止する必要があります。
また、不幸にも「気づかれてしまった場合」には、即座に中止してその場から逃れることも必要なのです。
探偵が尾行調査中に対象者に捕まるとどうなる?
調査員が調査ターゲットに捕まると警察沙汰になることもあり、それが事件化すれば予想以上にその問題が大きくなってしまいます。
でも、稀にあることなのですが、新米調査員やヘタクソな探偵の場合、経験不足により、調査ターゲットが警戒をしているのか、それともそうでないのかが分からないことがあり、
分からないが故に深追いをしてしまうことで、調査ターゲットに気づかれてしまうことがあります。
おとぼけ調査対象者は尾行に気づかないフリをする
また、調査ターゲットの中には、尾行や張り込みに気づいているのものかかわらず、気づいていないフリをする強者もいるので、新米調査員はこの強者ターゲットの餌食になりやすいのです。
これは「おとぼけ調査対象者」と呼ばれるものです。
探偵が調子に乗って尾行中にターゲットを追い込んで、さらに追い込んで、意図的に行き止まりに誘い込まれてしまい、逃げ道がなく捕まってしまう。。。
このような恐ろしい事態があります。

ちなみに、熟練の調査員であれば「おとぼけ対象者の場合でも、そのターゲットの微かな目線や行動の動線等から警戒状況を察知し、深追いを避けることが可能です。
長いこと探偵として活動していれば、尾行調査中や張り込み調査中に調査ターゲットに気づかれてしまい、調査がバレてしまうということはあります。
それがないと言えばウソになります。綺麗ごとはやめましょう。
(それか、探偵歴だけは長いが尾行経験が浅い調査員ならあるかもね)
探偵は、調査が気づかれる経験をして気づかれ回避能力を養う
探偵はそのような調査露見の経験を積むことで気づかれ回避能力を養い成長していくのであって、そのような経験なくして一人前になった探偵を僕は知りません。
しかも、腕の良い優秀な調査員ほど気づかれることが多いというケースもあり、先日この記事を書きました↓
だからと言って、もちろん探偵が調査対象者に尾行をに気づかれてもよいというわけではありません。
調査員は依頼人に成り代わって、調査ターゲットに気づかれることなく調査を遂行するべきであり、僕たちは常にそれを目指しています。
誰だって、調査ターゲットや依頼者とのトラブルは嫌ですし、都道府県公安委員会から行政処分なんて受けたくはないのですから。