
今回の探偵ブログは、探偵泣かせの「調査対象者の呼び出し」について書いていきます。
正直に言うとこのパターンは、調査対象が超がつくほどに警戒していることが多いです。
「探偵がとても嫌がる調査類型」ですが、これは裏を返すと探偵の腕の見せ所でもあります。
今回はそんな難しい調査についてのお話です。
なお、後半では、詐欺師を尾行したときの「とても嫌な失敗談」もお伝えします。
調査対象者の呼び出しとは
調査対象者の呼び出しとは、文字通り調査対象者をどこかの場所に呼び出す調査であり、呼び出すのは探偵ではなく依頼人です。
呼び出し場所は様々ですが、依頼者の自宅や駅前のレストランなんかに呼び出すことが多いです。
別居中の夫を自宅に呼び出す場合
例えばすでに3年も別居しており、所在や勤務先が不明の夫を、依頼者の自宅に呼び出す場合があります。
呼び出す理由は、
「離婚協議を進めたい」とか、
「離婚に応じる代わりに最後の話し合いをしたい」とか、
「最後に子供も交えて話をしよう」とかが多いです。
別居先に愛人がおり、すぐにでも離婚したい夫からすれば、話し合いで離婚してくれるのであればありがたい。
そのチャンスを是非ものにしたいということも多く、3年も帰宅していなかった元自宅に、夫がノコノコ現れるケースがあります。
アホ面下げてね。
ここで探偵が待ち受けるのです(張り込み→尾行するために)
探偵の目的は、話し合いが終了した後、調査対象者の夫が現在の住居に帰るまで尾行して、その所在を判明させることです。
呼び出された夫からすると「スゲー怪しい」ので超警戒する
妻が急に「離婚に応じる」と言い、急な面談を申し出てきた。
これは、やましいことがある夫からすると、非常に怪しく思えます。
もしかすると、話し合いの後で、
「探偵か誰かが尾行してくるかも知れない」
という想像力が働くのですね。
だから、その家から出てきた瞬間から警戒がマックスってことが多いのです。
所在を判明されたくないので、過度に警戒している
この場合、夫は所在を判明されたくないので過度に警戒しています。
それはそうでしょう。
夫からすれば、現在の住所で浮気相手と暮らしていることがバレれば、離婚の際にかなり不利な状況に陥ります。
不貞が認められると、有責配偶者(この場合は夫)は慰謝料・親権・財産分与等、すべての法的側面で不利な条件が突き付けられるためです。
誰だって浮気相手との証拠は押さえられたくない。
相手が誰であろうと。
だから、このような呼び出しの状況では、調査対象者は過度に警戒してしまうのですね。
対象者の呼び出し調査では、依頼者の演技力が重要
この場合、依頼人の妻からすると、夫をうまくおびき寄せた後は、
「なるべく早く出ていってもらったほうがありがたい」
のは間違いありません。
そのほうが、探偵の「調査時間」が少なくなるので、調査料金が安くなりやすいからです。
調査の時間の節約になると言えます。
逆に長引くと高くつきます。
だから妻は、話し合いも早々に「夫を追い出すようにケンカを仕掛けてみたり」しがちなのです。
夫からすると、これでは「強い不信感が芽生える」」でしょう。
だって、最後の話し合いだからって急に前の自宅に呼び出され、それで出向いてやったのに、いきなりケンカを売られて「さっさと出ていけ」ときたもんだ・・・
って思いますよね。
多くの場合、依頼者のこのようなおかしな呼び出しのシチュエーションと言動で、調査対象者の警戒度がマックスになってしまうことが多いのです。
極まれに、冷静に「女優さんのような演技」で「もっともらしい話し合い」を演じ、冷静に「無理なく調査対象者を送り出せる」依頼者もいます。
でも残念ながら、事前の探偵からのアドバイスを実行してくれる依頼者は少ないです。
わかりますよ。演技はなかなか難しいでしょう。
だって、目の前には3年も行方不明の憎い夫がいて、「口論したくなる気持ちも、早く追い出したいという気持ち」も痛いほどわかります。
でも、この時に「冷静に見事に演技」できる依頼者のほうが、結局は夫の警戒心を和らげることができ、探偵の尾行調査がうまくいくということになります。
警戒により夫の行動は異常になり、探偵が尾行できないことも
調査対象者が警戒するとどうなるのかというと、尾行中に異常行動を見せます。
例えば、徒歩尾行の場合、調査ターゲットは最寄りの駅まで歩行する際に「何度も何度も」後ろを振り返ります。
探偵がいるかどうか、尾行してくる人物がいるかどうかを確認しながら歩行しているのですね。
それどころか、依頼者の自宅で別れた後、意味もなく自宅周辺の路地をウロウロと徘徊し、同じ道を何度も通ってみたり、自宅の周辺を何度も周回するような異常行動をすることもあります。
周囲に溶け込んで調査ターゲットを尾行するのが探偵の特質ですが、誰もいないような道、特に同じ道で何度も見られてしまうと調査に気づかれてしまいます。
でも悪いことに、この「呼び出しの日の調査」で失敗してしまうと、取り返しがつかないことになるので、探偵のプレッシャーは尋常じゃない程に高まっています。
調査の前日から終了まで、まったく気が抜けない程に緊張してしまっているのです。
そう、依頼者からすると、この日は何とか呼び出せたがこれが「最後のチャンス」ということが多いのです。
一発勝負ってやつですね。
このような「対象者呼び出し調査」の場合、対象者の勤務先の情報もわからなくなっているケースが多いので、呼び出すほかにやりようがないのです(前の仕事は辞めている)。
尾行調査の失敗を報告する探偵は地獄の苦しみ
ターゲットの所在を判明できずに尾行に失敗した探偵。
その調査結果の報告を依頼者にする探偵ってね・・・地獄の苦しみですよ。
依頼人から罵倒された挙句、お金を全くいただけないことも実は多いんです。
正直そう思ってしまうことも多いですが、そんなことを言っても結果が変わるわけではないので、本当にむなしくなります。
だから、依頼人との事前の打ち合わせには長い時間を割き、
「もっともらしい演技の仕方」と「ターゲットを警戒させないようにするための極意」
については、しっかりと伝授します。
その事前準備(苦労)が、探偵にとっても依頼人にとっても良い結果につながることを、探偵は知っているからです。
依頼者の呼び出し相手が詐欺師の場合
最後になりますが、呼び出し相手がいわゆる「詐欺師」のことがよくあります。
この場合も、調査の難易度は極めて高いと言えます。
別居中の配偶者よりもさらに警戒度が高いと言えるでしょう。
だって、相手は刑法にかかわる犯罪者ですからね。
あくまでも、民事上の不法行為と呼ばれるものとなります。
※争いは民事です。
さて、依頼者が「詐欺師」を自宅に呼び出す場合ですが、詐欺師に対して1000万円以上のお金を渡してしまっているケースが多いです。
投資詐欺に引っかかり、1億以上のお金をだまし取られてしまった依頼人のケースもありました。
このような場合、相手はプロの犯罪者ですから、もっともらしい理由を付けて呼び出さなければいけません。
始めに断っておきますが、このようなプロの詐欺師は約束を平気ですっぽかすので、5割以上は空振りの調査になってしまいます。
探偵だって、呼び出しの日に詐欺師が来なければやりようがないものです。
来ないって、意外ですか?
犯罪者独特の勘というのでしょうか。
いわゆる嫌な予感というやつでしょうね。
もっとも、依頼人と詐欺師がまだ見た目は円満な関係であれば、呼び出しの確率は上昇します。
呼び出しの理由は、再融資(再投資)や追加貸付ですから、喜んで尻尾を振りながらくる詐欺師もいます。
でも、依頼人が探偵に頼むこ頃には、対詐欺師の関係は相当にこじれていることが多く、呼び出し=もう二度と詐欺師とは接触できなくなるケースも多いのです。
もちろん、特定の口座への振り込みを要求されるケースもあります。
とても残念な現実ですね。
探偵を長年していると、数千万~数億単位のお金をダマし取られてしまった人が、こんなにもいるのかと驚いてしまいます。
さて、そんな詐欺師がノコノコ呼び出しに応じて依頼人の自宅に来た場合どうなるでしょう?
それどころか、依頼人はここぞとばかりにこれまでは要求しなかった借用書を書かせたり、念書を取ろうとするものですから、詐欺師からするとたまったものじゃありません。
これは先月の調査の話ですが、話し合いもそこそこに、5分で逃げるように出てきた詐欺師を追いかけるのは大変でしたよ。
文字通り、逃げるように走り去りましたからね。
その時は、予想される駅に別の探偵を先回りさせていたので、何とか警戒をすり抜けつつ、詐欺師のアジトを判明させることができたのでよかったですが、そうそううまくいくことばかりではありません。
10年ほど前の話ですが、合計で億単位のお金をだまし取った詐欺師を尾行したときには煮え湯を飲まされました。
その時は、とある喫茶店に詐欺師を呼び出し、依頼人から「見せ金として現金100万円」を手渡しされた詐欺師の尾行をしました。
でもこの詐欺師、最初から尾行されていることを確信したような行動ばかりしていました。
いわゆる「探偵をまく」ような行動ばかりをしてくるのです。
徒歩尾行をする探偵は僕を含めて4人投入していたのですが、
最後は意図的に繁華街の狭い路地裏に追い込まれてしました。
探偵4人の内、これまでに3人が凝視されることになり、その3人が尾行を断念して別々の場所に散り散りになりました。
戻り方向に来るのを待ち構えていた僕の前に現れた「詐欺師が言い放った言葉」がいまでも忘れられません。
「まだ1人いたのか。これは意外だ」僕とのすれ違いざまに、詐欺師は冷静にそう言いって微笑んだのです。
探偵という確信を持ってそう言ったのかどうかはわかりません。
でもこの時点で、4人の探偵全てが面割れ(顔の認識)をされてしまったのは間違いがありませんでした。
残念ながら、この詐欺師は永遠に捕まえることはできず、この日以降、依頼者とのコンタクトは途絶えたと言います。
これが最初で最後のチャンスだったのですね。
以来、詐欺師の所在を割り出す調査が入る度に、僕の胃はキリキリと痛み、その時の情景がフラッシュバックするようになってしまいました。
探偵マンガやドラマで、犯人が主人公をコテンパンに出し抜くことがあります。
マンガであれば、後日キッチリと主人公がリベンジして犯人を追い詰めてすっきりするところでしょうが、現実の探偵はそんなにカッコいいものではありません。
チャンスは1度きりで2度目はなく、ただ働きになってしまうこともあるのです。
しかも、ただ働きなのに、依頼者からメッチャ怒られることも。
失敗調査のフラッシュバックや、調査結果が悪い時の「ただ働き」でもやりがいを感じられるタイプの人は、探偵に向いていると言えるでしょう。
僕はどうやら......そんなタイプのようだw
本日も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。